真夏の暑い盛りに引っ越しをする人も少なからずいるようです。
引越し業者が繁忙期となる3月や4月は料金が割高になるし、梅雨時は雨に降られる可能性が高いので、あえてその時期をずらして引っ越しの計画をするわけです。
また、子供たちがしばらく学校に行かなくて済む夏休みの期間であれば、計画も立てやすいという事情もあるようです。
しかし、真夏の引っ越しというのは、思った以上にさまざまな問題が起こりやすいのです。
引っ越しというのはかなりキツイ肉体労働であり、それを一年で一番暑い時期にやるわけですから、どんなことが起こるのかある程度は想像がつくかと思います。
ここでは、真夏の引っ越しで注意すべき点などを紹介してみたいと思います。
エアコンのない灼熱地獄の部屋での荷物の運搬作業
「真夏であっても家の中はエアコンが効いているから快適だ」などと思っている人は、引っ越し当日に地獄を見る可能性があります。
なぜなら、自分が持ち込んで取り付けをしたエアコンは、引越しの前日まで取り外しをしておくのが一般的だからです。
エアコンのない灼熱地獄ともいうべき部屋の中で、重い荷物を次々に運びだすという究極の肉体労働を引っ越し当日にすることになるわけです。
階段を使って2階から重い荷物をおろしたりする作業は、まさに地獄絵図さながらの状況といえるでしょう。
最近では、最初からエアコンが備え付けになっている部屋も多いですので、その場合は作業中にエアコンをつけることが可能ですが、引っ越しの作業というのは窓やドアを開け放して行いますので、冷房効果はあまり期待できません。
また、冷蔵庫も前日までに中身を空っぽにして水抜きをしておく必要がありますので、キンキンに冷えた麦茶で軽く休憩というわけにもいきません。
転居先への荷物の搬入時も同様です。
最初から備え付けのエアコンがあればいいですが、ない場合には荷物の搬出時と同様に地獄絵図を見ることになります。
エアコンの取り付け業者が設置作業をしてくれるのは、引っ越しの翌日以降になることが多いからです。
「荷物の運搬も終わったことだし、エアコン全開で涼むとするか」といったようなことはできないのです。
もちろん、その日の夜もエアコンなしで寝ることになりますので、たまたまその日が熱帯夜だったりすると確実に睡眠不足になるでしょう。
荷物を載せるトラックも、作業中は真夏の炎天下に駐車をしたままですので、車内はうだるような暑さになっています。
そのため、引越し作業中に熱中症で倒れてしまって救急車で搬送されるという人が毎年のように出てしまうのです。
実際に、引っ越しの作業中に熱射病で死亡するという痛ましい事故なども起きています。
参考:炎天下での引越し作業中に熱射病で死亡した事例
もちろん、引越し業者もしっかりと熱中症対策はとっており、スポーツドリンクなどをこまめに取るように指導はしているようですが、補給する水分の量が出て行く水分に追いつかないほど作業がハードだというのが現実です。
もし、引っ越し作業中にスタッフが熱中症で倒れてしまうようなことがあると、計画通りに引っ越しを終えることができなくなってしまう可能性もありますので、注意が必要です。
真夏の引っ越しはしたたり落ちる汗との闘い
真夏は、引越し業者とってはクレームが非常に多い時期になります。
クレームの原因を作っているのは、引っ越し作業中にかく汗です。
場合によっては40度近くになるエアコンのない室温の中で、重い荷物を運ぶというハードな作業をするわけですから、生身の人間であれば誰でも大量の汗をかきます。
荷物の運搬を終えた引っ越し作業員のユニフォームを絞ったら、大量の汗が床にしたたり落ちるに違いありません。
真夏の引っ越しは、作業員にとってはまさに汗との闘いなのです。
床にしたたり落ちる大量の汗
大量に汗をかけば、万有引力の法則にしたがってそれは下にポトポトと落ちることになります。
仮に汗がしたたり落ちても、床がフローリングなどであればそれほど問題になることはありません。
作業が終わったあとで、しっかりとふき取れば跡が残るようなことはありません。
問題になるのは、和室です。
畳の上に大量の汗が落ちることで、シミになってしまうことも少なくなくないのです。
もしそれが原因で畳を貼りかえることになってしまったら、その費用はあなたが大家に預けた敷金から差し引かれることになります。
もちろんこのことは、出て行く方の家ばかりではなく、新しく住むことになる家についても同じことがいえます。
もし新築のマイホームへの引っ越しだったりした場合、まだいい香りのする真新しい畳の上にボタボタと汗をたらされたりしたら、新築のオーナーであるあなたは卒倒してしまいそうになることでしょう。
また、床だけではなく、壁にも注意が必要です。
引っ越し作業ではいろいろなものを運ぶことになりますから、どうしても手が汚れてしまいます。
汗で濡れた状態の手に汚れがついているわけですから、そんな手でうっかりと白い壁紙などを触ってしまったら、どんなことになるかは想像がつくと思います。
ましてやそれが新築のマイホームだったりしたら、真夏に引っ越しをしたことを一生後悔することになるかも知れません。
荷物にも容赦なくしたたり落ちる大量の汗
汗をかくことで汚してしまう可能性があるのは、家の床や壁ばかりではありません。
お客様の大切な荷物にも、汗は情け容赦なく落下します。
ダンボールでしっかりと梱包された荷物であれば、多少の汗の付着は問題になりませんが、ダンボールに入れられていないものを運ぶときには注意が必要です。
引越し業者からハンガーボックスなどをレンタルして、そこに衣類を移すときなどは特に危険です。
大切な洋服に大量の汗を落としてしまったりしたら、余分なクリーニング代が発生してしまうことになります。
特に若い女性は、汗まみれの作業員が、自分の洋服をハンガーボックスに移動している姿を想像しただけで気が遠くなるでしょう。
引っ越し業者というのは、依頼主が作業を手伝うのは足手まといになるので嫌がりますが、ハンガーボックスへの衣類の入れ替えだけは自分でやらせてもらった方がいいかも知れません。
荷物の中でも特に注意を要するのが「桐のタンス」です。
桐のタンスに汗をボタボタと垂らしてしまうと、シミになって取れなくなってしまうのです。
もちろん多くの引越し業者はそのことを十分に承知していますので、荷物に桐のタンスがあるときにはエアーキャップ(プチプチ)などで覆って保護をしたり、新品の木綿の手袋をはめたりして慎重に運搬をすることになります。
しかし、それだけのことをしても暑い中での作業ですから、集中力が切れてしまってミスが起こる可能性があります。
とくに、作業にあまりなれていないアルバイトスタッフがいるときなどは注意が必要です。
参考記事:引っ越しの繁忙期にはアルバイト作業員が多くなるけど大丈夫?
真夏の引っ越し当日に荷造りが終わっていないと悲惨なことに
荷造りは、引越し業者が来る前日までに終える必要があります。
しかし、世の中にはけっこういい加減な人がいて、「なんとかなるだろう」と当日に荷造りを残してしまう人もいます。
真夏の引っ越しでそういった状況になったとき、業者から白い目で見られながら、大汗ダラダラでダンボールに荷物を詰め込むことになります。
もちろん、荷造りサービスの契約をしていなければ、引越し業者が荷造りの手伝いをしてくれることはありません。
汗をしたたらせながらダンボールに詰め込んだ衣類が、引っ越し先でどうなるかは、ある程度は想像がつくでしょう。
遠距離の引っ越しだと、転居先に荷物が到着するまで数日かかることがあります。
引っ越し先でダンボールを開けてみたら、黒カビによって大切な衣類がシミだらけになっていたなどということも実際にあるのです。
間違っても、荷造りを引っ越し当日に残してしまうことのないようにしましょう。
真夏の引っ越しでは普段なら起こらないようなミスも
真夏の引っ越しで問題が起こるのは、汗が原因となるものばかりではありません。
滝のような汗が流れる中での作業ですから、集中力を保つのが非常に困難になります。
暑さのあまり頭がボーっとしてしまって、普段ではありえないようなミスをおかしてしまうことがあります。
常識的にはまずありえないような軽い荷物をうっかりと落としてしまったり、トラックに積み込むべき荷物を置き忘れてしまったりという初歩的なミスが起こりやすくなります。
特に荷物の落下に関しては、汗で手が滑りやすくなっていることもあり、ちょっと気を抜くと落としてしまいます。
信じられないかも知れませんが、積み込んだときのダンボールの数にくらべて下ろしたときのダンボールの数が5個以上も少なかったなどという事例も実際にあるのです。
特に長距離の引っ越しで、途中で積み替え作業がある場合にこういったミスが起こりやすくなります。
足りなかったダンボールは、いったいどこの家におろされてしまったのでしょうか。
いずれにしても、こういったあり得ないようなミスが起こりやすいのが真夏の引っ越しの特徴なので、どうしてもその時期に引っ越しをしなければならない人は、それを覚悟したうえで計画をするようにした方がいいと思います。