引越し見積もりの金額は、業者や転居する時期などさまざまな要因によって大きく変わってきます。
多くの人は、一生にそう何度も引っ越しをするわけではありませんし、相場というものがなかなかつかめないと思います。
業者からの引越し見積もりのもらい方によっては、その金額には2倍近くの開きが出ることもあるのです。
仮に高い見積もりで引っ越しをしてしまったとしても、それを知らなければ気にもなりませんが、あとからそれが相場からかけ離れた高い金額だと知ってしまった場合には、きっと後悔することでしょう。
そんなことにならないためにも、業者に依頼するまえに、引越し見積もりについての知識をしっかりと身に着けておきましょう。
1.引越し見積もりの金額はなぜ業者によって大きな差が出る?
まったく同じ条件で複数の業者に引越し見積もりを依頼しているのに、驚くほどその金額に大きな差が生じることがあります。
それは一体なぜなのでしょうか?ここでは、その理由を明らかにしていきたいと思います。
1-1 引っ越しの料金は業者の規模によって違ってくる
テレビなどでよく宣伝をしている大手の引越し業者と地元の中小の業者の見積もり額を比較した場合、大手を100とすると中小の場合は65~80程度となることが多いようです。
これは、普通に考えてみればわかることですが、大手業者の場合広告費や営業マンの人件費などの経費が上乗せされているため、どうしても割高になりがちです。
しかし、だからといって大手より地元の中小の業者のほうがいいという単純なものではありません。
やはり、なんといっても大手には信頼感があります。
あとでさまざまなトラブルを起こしたくないという方や、大切な家具をていねいに運んでほしいと思っている方などは、あえて割高は承知のうえで大手に依頼することでしょう。
実際に、地元の中小の引越し業者のなかには、電話で概算の見積もりをしただけで実際の作業を請け負ってしまうようなところもあるようです。
実際に現場をみていないため、大きな見落としなどがあったりすると追加という形でお金を請求されたりすることもあるようです。
その点、大手の業者であれば、電話のみで仕事を請け負うということはまずありえません。
必ず営業マンが現地を調査したうえで、正確な引越し見積もりを作成してくれます。
1-2 各業者によるサービスの違い
梱包などのサービスに関しても、やはり大手の業者はそれなりのしっかりとした対応をしてくれます。
梱包用の段ボールの無料サービスなどは、大手の引っ越し業者であれば、いまや常識といえます。
大切な家具なども傷つかないように、しっかりと養生をしたうえで運搬をしてくれるでしょう。
中小の業者の中には、そういった養生などはほとんどしないで、トラックの荷台に毛布を敷く程度の対応で済ませるところもあるようです。
ただ、大手だからといってすべてが安心というわけではありません。
引っ越し業者は3月が一番の繁忙期となりますが、そういった時期に依頼をすると高い料金だけとられて、当日の作業には下請けの中小業者が来ることも少なくないようです。
このように、大手と中小の引っ越し業者には、それぞれメリットとデメリットがあります。
小さな子供のいる家庭などでは、どうせ家具などは傷だらけだし、安く運んでくれればそれでいいと考える人もいるでしょう。
重要なのは、予算とサービス内容を照らし合わせて、自分の納得のいく引越し見積もりを提示してくれた業者を選ぶということです。
2.引越し見積もりの金額を決定する各項目
引越し見積もりは、どのような基準で何を根拠に作成されるのでしょうか?
それらを知ることによって、業者からもらった引越し見積もりが適正なものなのかどうかをご自身で判断できるようになるでしょう。
2-1作業員の人数~2名から3名に増えるときが割高
引越しというのは、人手がないとできません。引越し見積もりで大きなウエイトをしめるのが、作業員の人件費です。
作業員の人数が多いか少ないかによって、引越し見積もりの金額は大きく変わってきます。
30キロ程度の移動距離で、2t車1台の場合の、ある引越し業者の見積もり金額を見てみましょう。
1人の場合53,000円。2人の場合69,00円、3人の場合91,850円、4人の場合10,8650円となります。
作業員が一人増えるにつれて、金額が16,800円~22,000円増えていることがわかるでしょう。
これが、一人あたりの作業員の人件費と考えていいでしょう。
ちなみに、これが4t車1台で300キロの移動距離となると、次のような見積もり額となります。
作業員1人の場合124,400円、2人の場合158,000円、3人の場合196,850円、4人の場合230,450円です。
こちらの場合は、一人増えるにつれて、33,600円~38,800円増えています。
距離が長くなる分、時間外労働の人件費がかさむこととなるので、これは当然のことといえます。
ここで興味深いのでは、30キロの場合も300キロの場合も、作業員が2名から3名に増えたときのみ割増しになっていることです。
30キロの場合は、1名から2名に増えたときや3名から4名に増えたときは16,800円なのに対して、2名から3名に増えたときのみ22,000円増額になっています。
同様に300キロの場合で見ても、1名から2名に増えたときと3名から4名に増えた時が33,600円なのに対して、2名から3名に増えたときのみ38,800円増えています。
これは、おそらくトラックに乗り込める人数を2人と考えていて、3名に増える場合は別途移動用の車両が必要になるとの考えからの料金設定なのかもしれません。
いずれにしましても、引越し見積もりは、このように作業員の人数によって大きく変わってくることがお分かりいただけたかと思います。
2-2 同居人の人数と部屋の数で概算見積もりは出来ますが。。。
引越し業者に概算見積もりをもらうときには、同居人の人数と部屋の数がわかればある程度の目安の金額が出せるようです。
つまり、同居人と部屋の数によってだいたいの荷物の量がわかるということになります。
荷物の量がわかれば、それを運搬するトラックのサイズや、作業員の人数が決まります。
あとは、どこからどこまで引っ越すのかという距離の要因を組み合わせて見積もりをするわけですね。
引越し業者によっては、電話によってこういった同居人の人数や部屋数をもとに概算見積もりを作成して、そのまま仕事を請け負ってしまうところもあるようです。
しかし、実際に引っ越しの作業をするにあたって、想定外の荷物などもあります。
同居人の人数や部屋の数の割には家具などがたくさんあったり、ピアノや仏壇など本来であれば付帯サービスに入れるべきものが抜けてしまったりすることがあります。
その結果、引越し業者から当初の2倍近い金額を追加で請求されたという例もあるようです。
あとあとのトラブルを避けるためにも、電話での概算見積もりだけで契約を済ませることはせずに、必ず現場を見てもらって正確な見積もりを出してもらうようにしましょう。
2-3 予定日によって金額は大きく変わる!?
同居人の数や部屋数が同じでも、引っ越しをする日によって金額が大きく変わるということをご存知でしょうか?
実は、引っ越しの時期や日にち(曜日)の選びかたによって料金が50%も安くなることがあるのです。
簡単にいってしまえば、業者の忙しいときは高く、暇なときは安くなるということになります。
これは、海外旅行のパックツアーの料金設定に似ています。
2-3-1 海外パックツアーと同じ理屈で安くなる
海外旅行のパックツアーなどの場合、お正月やゴールデンウィークなどのときはとても高く、それ以外の日時であれば驚くほど安くなります。
お正月やゴールデンウィークなどは、海外に出かける人が多いために、飛行機もホテルもなかなか空きができません。
一方、まったく乗客が少ない時期であっても飛行機は定期的に飛ばさなければいけませんし、ホテルも空き室ばかりであっても、光熱費や人件費などの固定経費はかかります。
思いっきり料金を下げても、空気だけを載せて飛行機を飛ばしたり、ホテルを空き室のままにしておくよりはいいと考えるわけです。
もちろん、その時期だけを見れば赤字ですが、その分を正月やゴールデンウィークに利用した人たちが負担するわけですね。
引越しの料金にも、この法則がぴったりと当てはまるわけです。
2-3-2 引越しは3月と9月が繁忙期で割高です
引っ越し業者の繁忙期というのは3月と9月です。
特に3月は転勤や入学などによって引越しをする人が多く、業者も配車や人員の確保に四苦八苦する時期なのです。
当然、そんな時期には値引きなんて望めません。
業者にしてみれば、その時期にはいくらでもお客さんがいるわけですから、当然強気になります。
もし可能ならば、この時期に引っ越しをするのは避けたほうがいいと思います。
2-3-3平日の午後に引越しをすると安くなります
次に曜日による引越し見積もりの変化ですが、一般に土日は高くなります。
これは、土日に引っ越しをする人が多いためです。
また、時間も午前よりは午後の方が安くなります。これは、午前中から作業を始めて、午後にはひと段落したいという人が多いからです。
そのため、午後から夕方にかけての時間に依頼をすると、かなり安い見積もりが出てくる可能性があります。
引っ越し業者は、繁忙期には猫の手も借りたいほど忙しくなる半面、6月や7月などの閑散期には、トラックや人手が空いてしまうことがあります。
引越しの作業があまりない時期であっても、車の維持費や従業員の人件費がかかってしまうわけです。
そのため、業者は思いっきり料金を下げてでも仕事を確保しようと思うわけです。
まとめますと、一番高い引越し見積もりになるパターンが、3月の土日で午前中に作業を開始するケースということになるでしょう。
一方、一番安い引越し見積もりになるパターンは、6月か7月頃の平日で、午後から夕方に作業を開始するケースということになります。
2-3-4すべてお任せなら50%引きも!?
さらに、引越し料金が安くなる裏ワザ的手法としては、引っ越しの日時や時間をすべて業者におまかせというやり方があります。
この場合ですと、引っ越し業者は自分の都合のいい日にトラックや人員を振り分けることが出来るので、リーズナブルな料金でやってくれることが多いのです。
このパターンであれば、繁忙期の料金にくらべて50%も安くなるということが、実際によく起こるようです。
特に、引っ越しの時期や日時に指定のない人は、このパターンでなおかつ複数の引っ越し業者に見積もりをもらって比較することで、劇的に安くなることでしょう。
複数の業者から見積もりを取るには、以下のような一括見積もり査定サービスが便利です。
2-4 移動距離による引越し料金の目安
当然ながら、引越しをする際の転居先までのトラックの運賃は移動距離によって変わってきます。
運輸局が料金の目安をまとめていますので、参考までに掲載しておきます。
2-4-1 法的な拘束力はありません
これらの運賃は、あくまで目安であり、法的にこの料金でなければならないという拘束力があるものではありません。
引越し見積もりを業者からもらった時に、運賃の項目を見て実際の移動距離と照らし合わせて適正かどうかを判断するための参考にしていただければと思います。
上限と下限という項目で大まかな範囲が分かるようになっています。
一般に、大手の引越し業者は上限に近く、中小の業者は下限に近いといわれていますが、必ずしもそうとは限らないケースもあります。
ただ、上限金額をはるかに超える金額を提示してきたり、下限金額よりもぜんぜん安い金額を提示してきたりした場合には、その理由を業者に確認してみるといいでしょう。
中小の業者の中には、まともな見積もりを作れないようなところもありますので、あとあとトラブルにならないように、事前に注意をしたいものです。
2-5 人が荷物を運搬する距離はとても重要
社宅やマンションなどの引越しで、見積もり金額に少なからず影響してくるのが、エレベーターがあるかどうかということと、部屋からエレベーターまでの距離です。
エレベーターがなければ、荷物の上げ下ろしをすべて人力でやらなければならなくなり、当然のことながら人件費がかさみます。
また、仮にエレベーターがあったとしても、運搬する荷物がすべてエレベーターに入るサイズのものであるかどうかはわかりません。
もし入らないサイズの荷物があった場合は、階段をつかって人力で運ぶしか方法はありません。
2-5-1 ドアから荷物が入らない!?
さらに困るケースは、ドアから搬入できないサイズの家具などがある場合です。
この場合は、クレーンなどを使って窓から搬入するなどしなければなりませんので、大変な作業となります。
こういった部分は、業者も実際に現場を見てみないと判断できない部分です。
電話で簡単に荷物の量と引越し先だけを告げて概算見積もりで契約をしてしまうと、あとあとトラブルになりかねません。
2-5-2 一戸建てでも安心はできません
一戸建てなどの場合であっても、家の前の道が狭くてトラックが入れないようなケースもあると思います。
こういった場合は、トラックを道幅の広い道路にとめて、何十メートルも玄関先まで人間が運搬しなければなりません。
うっかり平屋だから安い料金で済むと思っていたら、実際には驚くほど高い金額になってしまったというケースもあるようです。
このように引越し見積もりは、単純に荷物の量や移動距離だけでは割り出せるものではありません。
2-5-3 実際に現場を見てもらうことは重要です
あとでトラブルにならないように、実際に業者と契約する前に必ず現場を確認してもらって正確な見積もりを出してもらうようにしましょう。
そして、このような人件費のかさむケースほど業者によって引越し見積もりに差が出るケースが多いので、必ず複数の業者から見積もりをもらって比較をするようにしましょう。
2-6 忘れてはいけない付帯サービスの金額
引越し見積もりには、本見積もりの他に付帯サービスとして料金が別途になるものがあります。
エアコンの脱着やピアノの運搬、テレビアンテナの取り付けや取り外しなどです。
実際にはどれくらいの料金が別途必要になってくるのか、具体的に見ていきましょう。
2-6-1 ピアノの運搬料金の目安は?
一般的なアップライトピアノの運搬料金の目安ですが、10km以内の市内の場合で1Fから1Fへの運搬という条件で3万円~5万円といったところです。
これは、あくまでもピアノの運搬だけを依頼した場合の料金ですので、引越しと同時に依頼する場合は1万円~2万円となる業者が多いようです。
大手の引越し業者の中には、税込みで8000円切るほどの安さをアピールしているところもあるようです。
いずれにしましても、運搬する距離や2Fや3F以上の部屋に運ぶ場合は大きく料金がかわってきますので、実際に見積もりをとってみないことには正確な数字は分かりません。
2-6-2 エアコンの脱着はいくらでやってもらえる?
最近はエアコンも安くなっていますので、古いものならばそのまま旧居において行ってしまってもいいのですが、まだ買ったばかりのエアコンであればそういうわけにもいきません。
別途で電気屋さんを頼むのも面倒なので、引越し業者がやってくれれば助かります。
大手の引越し業者であれば、最近はほとんどのところが安い料金でやってくれるようです。
しかし、引越し業者の中には、エアコンの脱着はできないというところもあるようなので、この辺は、事前に確認しておくといいでしょう。
ちなみに、電気屋さんに別途でエアコンの脱着をたのむと、取り外しで15,000円程度、取り付けで20,000円~25,000円程度はかかるようです。
実際には設置する場所は、冷媒の配管の長さなどによって料金は大きく変わってきますので、実際に現場を見てもらって見積もりをもらうようにしましょう。
2-6-3 テレビアンテナの脱着はどうする?
テレビのアンテナを引越しの時にどうするかという点も悩ましいところです。
なぜなら、引越し業者にアンテナの取り外しを依頼すると1万円程度の料金が発生するからです。
最近はテレビのアンテナも安いので、一式セットで買っても1万円から2万円程度です。
わざわざ古いアンテナを、お金を払ってまで外して持っていくなら、転居先で新しいものを買って電気屋さんに取り付けしてもらったほうがいいかもしれません。
電気屋さんも、自分のお店で買ったアンテナであれば喜んで取り付けしてくれますが、古いアンテナの取り付けだけを頼んでもあまりいい顔はしないものです。
もちろん、大手の引越し業者の中には、付帯サービスとして別途利用金を支払えばやってくれるところも多いので、事前に確認をしておきましょう。
2-6-4 その他の付帯サービス
最近の大手引越し業者は、さまざまなサービスを代行してくれます。
粗大ごみの引き取りから、自家用車の移動、部屋の掃除代行、転居先の新聞の手配など、あらゆることをやってくれます。
忙しくてなかなか時間の取れない方は、このような付帯サービスを利用してみるのもいいと思います。
しかし、自分で簡単にできることもありますので、安く引越しをしたいのであれば、なるべく自分でできることは自分でするようにした方がいいでしょう。