関東地方から関西地方、あるいは関西地方から関東地方に引っ越しをするときに気をつけなければならないのが、家電品が対応している周波数です。
関東地方では50Hzの周波数で電気が供給されており、関西地方では60Hzで供給されています。
最近では、インバーター式のためにどちらの地域でも使えるようになっている家電も多くなっていますが、なかには周波数の違う地域に持って行くと、まったく使い物にならなくなってしまうものもありますので注意が必要です。
ヒーター系は大丈夫なものが多いですが、モーターを使っている家電品は注意が必要です。
関東と関西での周波数の違いに対応できない家電品には、どういったものがあるのか具体的に解説してみたいと思います。
関連記事:関東の人が関西に引っ越しをするときに注意すべきこととは?~関東と関西の言葉や文化・電気の周波数の違い
周波数の切り替わる境目の地域はどこでしょうか?
関東地方は50Hz、関西地方は60Hzといわれても、具体的にどこが切り替わる地域なのかを知っている人は少ないでしょう。
たとえ近距離の引っ越しであっても、境目付近に住んでいる人の場合は、転居先での周波数が変わってしまう可能性がありますので、どこから周波数が変わるかを知っておくことは重要です。
関東より北の地域と山梨県は、すべて50Hzの電気が供給されております。
ややこしいのは静岡県と新潟県です。
静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を境に、東側が50Hz、西側が60Hzの電気が供給されているのです。
つまり、新潟県と静岡県では、同一県内であるにもかかわらず、川を一本超えると供給されている周波数が異なるということになるのです。
距離的には近場の引っ越しであっても、川を1本こえると使えなくなってしまう家電品があることになりますので注意が必要です。
また、新潟県の場合は、佐渡島も60Hzとなっているようです。
さらに、50Hzと60Hzの境界付近には、一部混在地域もあるようですので、引っ越しをする前に、管轄の電力会社に十分に確認をしておくようにした方がいいでしょう。
周波数によって問題のでる家電品と問題のでない家電品
家電品といっても、周波数の影響を受けずにまったく問題なく使用できるものもあれば、周波数が変わることで本来の性能を発揮できなかったり故障してしまったりするものもあります。
具体的に、どういった家電品が周波数の影響を受けるのでしょうか?
モーターが使われている電気器具は回転数が変わってしまいます
周波数の異なる地域に引っ越しをするときに気をつけなければいけないのが、モーターを使っている電気製品です。
交流モーターは、周波数に比例して回転数が変わりますから、関東仕様の電気器具を関西に持って行くと2割ほど回転数が早くなり、逆に関西仕様の家電品を関東地方に持って行くと2割ほど回転数が落ちてしまうことになります。
具体的にモーターを使った家電品には以下のようなものがあります。
ジューサー
ミキサー
扇風機
冷蔵庫
換気扇
洗濯機
衣類乾燥機
テープレコーダー
ただし、「掃除機、ジューサー、ミキサー、扇風機、冷蔵庫、換気扇」に関しては周波数が変わるとまったく使えないということではなく使えることは使えるけれども能力が変わってしまうということになります。
それに対して「洗濯機、衣類乾燥機、テープレコーダー」などは、そのままでは使うことができません。
洗濯機の脱水機能や衣類乾燥機などは、ドラムの回転数が変わってしまうことで危険が伴いますし、テープレコーダーの場合は音程が変わってしまうことになります。
これらの電気機器を周波数の異なる地域で使うには、ベルトやタイマーなどの部品交換が必要になりますが、そこまでするのであれば買い替えをした方がいいかも知れません。
また、エアコンもモーターを使用しますが、最近のエアコンはインバーター式のものがほとんどですので、基本的には50Hzと60Hzの両方で使うことができるはずです。
モーターがなくてもそのままでは使えないもの
周波数が変わることでモーターの回転数が変わってしまいますので、モーターを使用している電気機器のなかには周波数の異なる地域では本来の性能が発揮できなかったり、そのままでは使えなかったりするものも存在することが分かりました。
しかし、周波数が異なることで使えなくなってしまう電気機器は、モーターを使うものばかりではありません。
たとえば、蛍光灯、電気時計、電子レンジといった電気機器も周波数の影響を受けるため、そのままでは使えないものも存在します。
ただし、蛍光灯の場合は、最近のものは安定器を使用せずにインバーター化しているものがほとんどですので、そのまま使えるものが多くなっています。
電気時計の場合には、周波数切替えスイッチがあれば問題ありませんが、それ以外のものは買い替えが必要になるでしょう。
電子レンジも、周波数が変わると、高圧トランスや高圧コンデンサー、タイマーなどを交換しないと基本的には使えません。
しかし、最近の電子レンジのなかには、どちらの周波数でも使えるタイプのものも多くなっているようです。
周波数が変わっても関東と関西で問題なく使える電気機器
周波数が変わってしまうことで、能力が変わってしまったり、まったく使えなくなってしまったりする電気機器があることがお分かりいただけたかと思いますが、実は、周波数が変わってもまったく問題なく使用できる電気機器もたくさんあるのです。
たとえば、電気炊飯器、トースター、コンロ、こたつ、電気毛布、ストーブ、アイロンなどです。
これらの電気機器は、電気のエネルギーを熱に変換する機器となるため、周波数の影響はまったく受けないことになります。
そのため、日本全国どこに引っ越しをしたとしても、そのまま使えることになります。
また、テレビやラジオなどの電波を使用する電気機器も、直接周波数の影響を受けませんので、50HZの地域であっても60Hzの地域であっても、問題なく使えることになります。
異なる周波数の地域への引っ越しが決まったら
電気の周波数が異なる地域への引っ越しが決まったら、まずは引っ越し先で使える電気機器と使えない電気機器を仕分けしなくてはなりません。
使えないものを転居先に持って行っても、結局は処分することになってしまいますし、余計な荷物が増える分だけ引っ越し費用も無駄になってしまいます。
そういった電気機器は、リサイクルショップに持ち込んで現金に変えたり、古いものであれば処分をしてしまったりする方がいいでしょう。
また、欲しいという人がいれば知人などにあげてしまってもいいと思います。
参考記事:引っ越しのときに出る粗大ごみや不用品はどう処分すべきか?
そもそもなぜ日本国内で関東と関西の周波数が異なるのか?
関東と関西で電気の周波数が違うということは、知識としては知っていても、そもそもなぜ同じ日本国内に2つの周波数が存在するのかを知っている人は少ないのではないでしょうか?
実際、このような国は世界でも珍しいようなのですが、そもそもこのような不便な状況を招いてしまった発端は、明治時代に関東に電気を供給する東京電燈と、関西に電気を供給する大阪電燈で、異なる周波数の発電機を導入してしまったことにあります。
東京電燈では、50Hz仕様のドイツ製発電機を導入し、大阪電燈では60Hz仕様のアメリカ製の発電機を採用してしまったのです。
その結果、それぞれの電力会社の周辺一帯に同じ周波数の電力が供給されるようになっていき、関東と関西で周波数がきれいに分かれることになってしまったのです。
戦後の復興時期に、東西の周波数を統一させるような構想もあったようですが、結局は実現はせずに現在にいたっています。
