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引越し業者の営業マンと話を進めていると、「いま決め手いただければ20万円のところ15万円にさせていただきます」といったような殺し文句をいわれることがあります。
即決してくれるなら、本来の料金よりも大幅に安くなることをアピールしてくるわけです。
多くの人は、引越し料金の相場なんて分かりませんから、このチャンスを逃すともったいないと思って契約をしてしまいがちです。
しかし、ちょっと待ってください。
その引越し業者の営業マンが「いまだけ限定」で提示してきたその金額は、本当に相場よりも安いのでしょうか?
引越し業者の営業マンに「いま決めていただければ...」といわれたら、どのように考えればいいのかについて具体的に解説をしてみたいと思います。
引っ越しの相場を知らないことが判断を狂わせる原因
引越し見積もりというのは、ある意味ではオーダーメイド的なところがあり、一般の人にとっては目安となる金額がなかなかわからないものです。
たとえば、家族4人で東京から大阪まで引っ越しをした場合でも、6万円で済んでしまった人がいる一方で、30万円以上かかってしまったという人も実際にいるわけです。
引っ越しの料金というのは、単純に移動距離や家族の人数だけでは判断できません。
さまざまな要因によって金額が大きく変わることになるからです。
混載便なのかチャーター便なのかでも変わりますし、平屋の家に引っ越しをするのと、エレベーターのないマンション5階に引っ越しをするのとでは、料金が大きく違うことは容易に想像ができるでしょう。
こういった不透明な部分があるために、一般の人が引越し料金の目安を判断するというのは非常に困難となっているわけです。
引越し業者の営業マンが「いま即決してくれたら20万円の見積もりを15万円に値引きさせていただきます」などということがよくあるのは、その値引きしてもらった15万円がはたして本当に安いのかどうかを一般の人が判断できないことを彼らは知っているからです。
「20万円が15万円になるなら」といわれて、営業マンのいいなりで契約してみたものの、本当は10万円以下で引っ越しができるはずだったかも知れないのです。
引越し業者の営業マンが強引に即決を迫る本当の理由とは?
引越し業者に限らず、「いま決めていただければ」というセリフは営業マンの常套句ともいえるものですが、彼らはなぜお客様に対して即決を迫るのでしょうか?
結論をいってしまえば、他の引越し業者に仕事を取られたくないからです。
先ほども書きましたように、一般の人にとっては引越しの相場というのは非常に分かりにくく、見積もりをもらってもそれが高いのか安いのかさっぱりわからないわけです。
そのため、営業マンから見積もりをもらったあとに、「もしかしたらボラれているんじゃなかろうか?」などと考える人も当然います。
その流れから「他の引越し業者にも見積もりを取ってみよう」などと考えるのは、ごく自然なことといえます。
最初に訪問をした引越し業者にしてみれば、他の業者に相見積もりを取られるということは、そこに競争が発生することになります。
つまり、依頼者が3社から見積もりを取ったとすれば、単純に自分のところが受注できる可能性は3分の1になってしまいます。
しかし、たとえ20万円を15万円に値引きしたとしても、確実に100%受注できるのであればその方が得だと営業マンは考えるわけです。
彼らの口からでる「いま決めていただければ」というセリフの裏側には、そういった本音が隠されていたわけです。
関連記事:引越し業者の営業マンがライバルより先に訪問したがる本当の理由
他にもまだまだある引っ越し営業マンの殺し文句
「いま決め手いただければ....」といった名セリフ(?)以外にも、引っ越しの営業マンの殺し文句はまだまだあります。
たとえば「会社の決まりでこれ以上は安くできないんです」あるいは「本来はこの料金ではできないんです」というセリフです。
正規の引越し料金はもっと高いのだけれど、あなただけには特別の料金設定をしましたということをアピールするわけです。
こういったセリフも、ある程度引越し料金の相場が分かっている人には通用しませんが、多くの人は相場をしらないために営業マンの言葉を信じてしまったりするわけです。
あなたがなかなか即決してくれないと見るや、名俳優も真っ青の演技をする営業マンもいます。
「分かりました。それではちょっと上司と相談してきますね」などといって、いったん外に出て電話をする演技をしたりします。
そして、数分後にあなたのもとに戻って来た営業マンは次のようなセリフを言うに違いありません。
「お客様、ラッキーです!ダメもとで上司とかけあってみたら、OKを出してくれました!通常はこの金額はありえないですよ」
おそらく、その営業マンは上司に電話などしていないでしょう。
彼らは、自分のノルマを達成するためには、名俳優も真っ青の演技をするのです。
そして、次のようなダメ押しのセリフを言うに違いありません。
「ここまで安くして契約が取れないとなると私のクビが飛んでしまいますので、なんとかうちでお願いできませんか?」
こんな演技をされたら、年配で人情深い人などは、つい営業マンがかわいそうになって契約書にハンコを押してしまうかも知れません。
くれぐれも、ノルマに追われた引越し営業マンの名演技には気をつけたいものです。
強引にダンボールをおいて行ってしまう営業マンもいます
「いますぐ決めていただければ」という殺し文句にお客が反応しなかった場合、ツラの皮の厚い営業マンのなかには、ダンボールを勝手に置いて行ってしまう人もいます。
「ダンボールは無料サービスですから、ぜひ荷造りにお使いください」などといったセリフを残して、頼みもしないダンボールを置いて行ってしまうわけです。
これも、他の引越し業者に仕事を取られないための営業マンの常套手段といえるもので、「わざわざダンボールをおいて行ってもらったのにいまさら他の業者に依頼できない」とお客に思わせる心理効果をねらっているわけです。
しかし、少しでも安く引っ越しをしたいと考えているのならば、そのようなダンボールは絶対に受け取ってはいけません。
ダンボールを無料で提供してくれるというと、なんだかとても得をしたような気分になりますが、大手の引越し業者であればダンボールの無料提供はいまや常識です。
ダンボールにだまされて高い料金で引っ越しをすることになってしまったのでは、本末転倒ということになります。
営業マンがダンボールを置いていきそうになったら、「まだ契約が済んでいませんので受け取れません」とはっきりお断りしましょう。
営業マンの中には、「契約してもしなくてもどっちでも結構ですから、ぜひ使ってください」などと善意をよそおったりする人もいますが、信用してはいけません。
ダンボールを受け取ってしまったという負い目を利用して、あとから強引に契約を迫ってくる可能性が高いからです。
参考記事:国民生活センターに寄せられている引越し業者へのクレーム
1社だけの見積もりしかとらないと引越し業者のいいなり
「いま決めていただけたら」という殺し文句や、ダンボールを勝手に置いて行ってしまうという方法で、他社との競争を避けようとする引越し業者の営業マンですが、即決で決まるということは、業者にとっては想像以上においしいことになるのです。
もちろん、自分のところで100%受注できるというメリットが一番大きいですが、料金的にもかなりのメリットが業者にはあることになります。
先ほども書きましたように、一般の人にとっては引越し業者の料金相場というのは見当がつきませんから、見積もりを多少高めに出されても気がつきにくいという側面があります。
本来であれば、10万円もあればできる引っ越しであっても、あえて20万円で見積もりを作成しておいて「いま決めていただければ15万円で」と5万円値引きして契約をしたとしても、十分に儲かってしまうわけです。
1社だけしか見積もりをとらないと、このように引越し業者はやりたいように交渉して契約が出来てしまうわけです。
ところが、他社との競争となると、そんな素人だましのような手口は通用しなくなります。
本来の適正価格をベースに他社と真剣勝負をしなければならなくなりますから、がんばって競争に勝って受注をしたとしても、それほど儲からなくなってしまう可能性があるわけです。
逆に、お客の立場にしてみれば、競争させることで業者に本音の見積もりを出させることができるので、お得に引っ越しできる可能性が高くなります。
たとえば、4社に見積もりを取った場合、A社8万円、B社10万円、C社13万円、D社16万円などという提示額になることは、よくあることなのです。
こんなときに、最初13万円で見積もりを出してきたC社が「7万5千円まで下げますから、ぜひうちでお願いします」などと言ってきたりすることもよくある話なのです。
13万円が7万5千円になってしまうわけですから「最初に出してきた見積もりはいったい何だったんだ」と逆に不信感をおぼえたりしてしまいますね。
しかし、引越し界隈では、そういった話は日常茶飯事なのです。
営業マンにのせられて契約をしてしまってもキャンセルは可能です
営業マンに強引に即決を迫られて契約をしてしまったものの、やはり何だか高いような気がして試しに他の引越し業者に見積もりをとってみたら、そちらの業者の方がぜんぜん安かったというようなことがあるかも知れません。
そんなときには、営業マンに乗せられて即決してしまった自分を悔やむことになると思いますが、決してあきらめる必要はありません。
なぜなら、引っ越しの契約というのは、当日の2日前までであれば無料でキャンセルをすることができるからです。
参考記事:引越し業者のキャンセルでトラブルにならないための豆知識
これは標準引越運送約款に明確に記載されていることですから、引越し業者が拒むことはできません。
契約を交わしてしまった営業マンにどうしても断りの電話を入れにくいということであれば、営業マンではなく事務所に直接電話をして、受付の女性にキャンセルを伝えればいいのです。
受付の女性であれば面識がありませんし、キャンセルの依頼も淡々と処理をしてくれるはずです。
しかし、いくら2日前までであればキャンセルができるからといって、あまり直前になってのキャンセルは業者に迷惑をかけてしまうので、避けるようにしましょう。
特に、春先などの繁忙期は、どこの引越し業者も作業員やトラックのスケジュールをタイトに組んでいますので、直前のキャンセルは大迷惑になるからです。
また、引っ越し業者のなかには、こういったキャンセルをさけるために、契約のときに手付金を要求したりするところもあるようですが、あとあとのトラブルを避けるためにそういった業者との契約はしない方が無難といえます。