引越し業者のキャンセル料金が2018年6月に大幅値上げとなります。
これまでは、当日のキャンセルであっても引っ越し代金の20%、前日だと10%、2日前は無料という決まりになっていました。
ところが、ネットの普及にともなって直前のドタキャンが増えたことに危機感を感じた引越し業界は、キャンセル料の値上げに踏み切ることになったわけです。
改定後のキャンセル料は当日が50%、前日が30%、2日前が20%となります。
引越し業者のキャンセルに関しては標準引越運送約款に記載されています
引越し業者のキャンセルに関する取り決めとしては、国土交通省が作成した「標準引越標準運送約款」の二十一条に以下のように記載されています。
『「第 二十一条 当店が、解約手数料又は延期手数料を請求する場合は、その解約又は受取日の延期の原因が荷送人の責任によるものであって、解約又は受取日の延期の指図が見積書に記載した受取日の前日又は当日に行われたときに限ります。ただし、第三条第七項の規定による確認を行わなかった場合には、解約手数料又は延期手数料を請求しません。
2 前項の解約手数料又は延期手数料の額は、次の各号のとおりとします。
一 見積書に記載した受取日の前日に解約又は受取日の延期の指図をしたとき 見積書に記載した運賃の十パーセント以内
二 見積書に記載した受取日の当日に解約又は受取日の延期の指図をしたとき 見積書に記載した運賃の二十パーセント以内』
分かりにくい文章で書かれていますが、要するに2日前までは解約料はかからず、前日の解約や受取日の延期の場合は10%、当日の解約や受取日の延期の場合は20%の解約料がかかるということが書かれています。
この標準引越標準運送約款の第二十一条が2018年6月に改定されて、2日前のキャンセルが20%に、前日が30%、当日が50%ということになるわけです。
これまでが安すぎた引越し業者のキャンセル料
当日のキャンセル料が20%から50%に、前日が10%から30%に、2日前が無料から20%にそれぞれ大幅アップとなるわけですが、考えてみるとこれは仕方のないことといえそうです。
むしろ、これまでのキャンセル料が安すぎたといえます。
たとえば、ホテルなどのキャンセル料は当日であれば100%が普通です。
それが、引越し業者の場合は、これまで20%だったわけです。
ホテルの場合は、予約が入れば部屋を開けて待っているだけですから、特に何か損失が発生するわけではありません。
キャンセルされなければ発生したであろう売り上げを失うのみです。
ところが引越し業者の場合には、その引っ越しのためにトラックやスタッフを事前に用意しておく必要があります。
引越し業者は、繁忙期などになると、トラックを外注したり大勢のアルバイトスタッフを雇用したりしなければなりません。
ところが、当日にドタキャンされてしまうと、それらのトラックやスタッフは予定していた仕事をすることができなくなってしまいますので、車両費やスタッフの人件費が損失となってしまうのです。
ちなみに、引っ越し1回あたりの平均作業員は3.3人で、平均車両台数は1.7台だそうです。
それだけの損失につながるにもかかわらず、これまではキャンセル料として20%だけしか請求できかったわけですから、さすがに安すぎるとの判断から今回の改定にいたったのだと思います。
改正によって、当日のキャンセルは50%に値上げされることになりましたが、それでもホテルなどのキャンセル料とくらべるとまだ安いといえるわけです。
当日にキャンセルされると7割は作業できずに終わってしまいます
キャンセルされるにしても、せめて2日前くらいであれば、引越し業者も用意したトラックやスタッフを他の仕事に振り分けることも可能かもしれません。
実際に、2日前のキャンセルであれば、8割程度はなんとか他の仕事に振り分けることができているようです。
ところが、当日のキャンセルとなりますと、トラックや作業員を他の仕事に振り分けすることができるのはせいぜい3割ほどになってしまうそうです。
つまり、7割は損失となってしまうわけです。
そういったことを考えた場合、これまでの当日キャンセル料が20%というのは、あまりにも安すぎたということになります。
引っ越しの場合はキャンセルする方の負担も高額になりがちです
たしかに、当日にドタキャンされて見積もり金額の20%しかキャンセル料をもらえないというのは引越し業者にとって気の毒なので、50%へのアップも致し方ないといえます。
しかし、ホテルの宿泊料などとくらべて引越し業者の料金というのは高額になることが多いので、キャンセルする方の負担もかなり大きくなってしまいます。
家族で長距離の引っ越しをするときには、30万円~40万円のも費用がかかってしまうこともあります。
もし、何らかの理由で引っ越しをキャンセルしなければならなくなってしまった場合、これまでであれば6万円~8万円のキャンセル料で済んでいたものが、これからは15万円~20万円もかかってしまうことになります。
引っ越しの当日キャンセルの場合、業者の損失も確かに大きいですが、依頼主側の負担も大きくなってしまうために、ホテルなどのようにキャンセル料を100%などとは安易に設定できないのでしょう。
「他にもっと安い引っ越し業者が見つかった」などという自分勝手なキャンセルは問題外ですが、身内に不幸があったり、突然の病気になってしまったりしてキャンセルしなければならないこともあるわけです。
そんなときに、泣きっ面に蜂状態にならないように、これまではキャンセル料を低めに設定されていたのだと思いますが、最近になってあまりも当日のドタキャンが増えてしまったことで、値上げに踏み切らざるを得なくなったのだと思います。
どんなときに引っ越しを当日ドタキャンすることになるのか?
引っ越しを当日にドタキャンする理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
心情的にはこれは仕方がないと思えるものもあれば、さすがにこれはいくらなんでも、といいたくなるような理由までさまざまです。
理由として仕方がないと思えるのが、身内に不幸が起こってしまったり、急病で入院をしてしまったりした場合です。
さすがにこればかりは事前に分かりませんので、どうすることもできません。
こうした理由での当日ドタキャンであれば、引越し業者も心情的には納得がいくことでしょう。
また、これからはこういった避けられない理由のキャンセルであったとしても、当日のドタキャンということであれば50%のキャンセル料を支払わなければならなくなってしまいます。
契約金額が20万円だった場合、10万円を支払うということです。
こういったケースの場合には、どうしてもキャンセルをする方に同情してしまいます。
ところが、引っ越し当日に会社を休む予定だったのが、急な仕事が入ってしまって休めなくなってしまったとか、当日にお金が用意できなくなってしまったなどという、自分勝手なキャンセルをする人も実際には少なくないようです。
ひどい人になると、他の安い業者と契約をしたあとに、先に契約した業者のキャンセルを忘れていたなどということもあるようです。
これまでのルールでは、こういった自分勝手な当日のドタキャンであっても、引越し業者は20%しか請求することができなかったのです。
つまり、20万円の契約だった場合は、4万円ということです。
これからは、当日のドタキャンに対するキャンセル料は50%ということになりますので、さすがにこういった自分勝手な理由でキャンセルをする人は減るのではないかと思われます。